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特別寄稿:東京女子医科大学神経内科 清水優子講師

多発性硬化症と妊娠、IFN-β(ベタフェロン®、アボネックス®)について

 多発性硬化症は女性に多く、その発症年齢は20代~40代で、妊娠出産にかかわる時期にちょうどかさなります。そのためIFN-βの治療がMSに必要であることが理解できても、治療に際して、妊娠、出産、生まれてくる子供への影響が懸念され、躊躇されることがあるとおもいます。

 妊娠・出産において、大切なことは、多発性硬化症の再発がなく症状が安定していることが原則です。経験的には、すくなくとも1年以上再発がなく、病状が安定していれば妊娠の準備をしていいと思います。しかし再発回数が多く、病状が不安定な場合には、まずIFN-βなどの治療を開始して、再発をおさえ、病状を安定させてから妊娠準備をしてください。

MSと妊娠

 もしIFN-βをすでに開始しており、挙児を希望している場合には、IFN-βを中止できるかかどうか主治医とよく相談してください。IFN-βの薬理学的作用を考慮すると、少なくとも妊娠1ヶ月前に中止することが必要です。最近の論文では妊娠1ヶ月まえにインターフェロンを中止していれば胎児に影響がないことがわかりました。

 最近、IFN-βを妊娠初期まで使用していた妊婦についての報告がありました。その結果では平均妊娠9週まで妊娠に気付かず、IFN-βを使用していた場合、出生時体重が平均値よりも低体重の傾向がありましたが、児の言語・運動発達は正常でした。また以前にIFN-β治療をしたことのある妊婦の結果(妊娠時には治療なし)においても、新生児体重・流産率ともに健常人と同じで差はありませんでした。

 しかし妊娠3ヶ月までIFN-βを使用していた妊婦の結果では、新生児は低体重で、流産の率が高くなる傾向がありました。

 IFN-βを中止する場合、いきなり中止にせずに1か月ほどかけて減量し中止することをお勧めします。急に中止にすると免疫バランスがくずれてしまい、せっかく安定している病状が悪化する可能性があります。

 IFN-βは、出産後なるべく早期に再開してください。できれば初乳がすんだら再開するのが望ましいと思います。初乳はウイルスや細菌感染を防御するたんぱく質が豊富に含まれているので、新生児を感染から守るためにとても大切です。それからIFN-β治療中、授乳は原則として禁止です。それは、IFNの新生児への影響について、よくわかっていないからです。

 ではIFN-βの男性に対する影響はどうでしょうか?これまでインターフェロンβによるヒトでの男性生殖能への影響を示すデーターはありません。動物実験の研究報告がひとつあります。アカゲザルに対してIFNβ1bを28日間反復投与して精巣への影響を調べたところ、精巣毒性は認められませんでした。催奇形性の報告もありません。以上の結果をふまえると、男性へのベタフェロンの投与制限はない、というのが一般的な認識です。ですから男性の患者さんについてはIFN-βの治療をやめる必要はないと思います。

 以上のことを踏まえ、万が一IFN-β治療中に妊娠が判明しても、パニックにならず、慌てず、すぐに主治医と産婦人科医に相談することが重要です。

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