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ベタフェロン導入の決意

愛知県 薬剤師 H.N.さん

 「多発性硬化症」この病名を知ってショックでした。いえ、正確に言うと初めて聞いた時は病気の内容をあまり知らず、知れば知るほど「大変なこと」になったと思ったのでした。

 私は体を動かすことが好きで、学生時代から毎年登山も続けています。冬はスキー、普段はテニスと病気知らずで誰よりも元気に過ごしていました。日頃は、薬剤師として患者さんにお薬の説明をして投薬していますが、薬も病気も身近で遠い存在でした。

 そんなある夜、急に左顔面が麻酔の切れかけのように痺れてきたのです。最初はひどい肩コリかと思っていました。でも、その日の夜から今度は右足が痺れてきて、そのうち右肩や上腕を触っているのに布を一枚かぶせた上から触っているような違和感があることにも気づきました。

 受診した病院で私のMRI画像を見た神経内科医は「これは多発性硬化症だね」といいました。このときがこの病気との出会いでした。

 私の脳の写真には牡丹雪のように白い斑点がたくさんあって、それを見る先生の顔が、さっきの診察の時とは全然違っていました。「今までなんともなかったの?」「過去にも炎症を起こした跡がたくさんあるね」「ふつうは入院してステロイドのパルス療法をするんだけど、仕事休める?」話はどんどん進みますが、正直私は今日初めて会ったお医者さんから初めて聞く病名、初めての入院勧告、とどれをとってもパニックになっていました。そして昨日までしびれはあったけれど、普通に生活していた私にとって仕事を休む、ましてや入院なんて考えられないことでした。結局明日もう一度今度は造影MRIを撮ろうということになり、翌日再診。造影MRIでもはっきりと活動性の病変が見られたため「少し休んで治療に専念しなさい」といわれました。

 そんなわけで、見かけ元気な私は大学病院に入院することになりました。そのころには舌や腰まで痺れてきてこのままにしておいたら取り返しのつかないことになりそうな気がしていましたので内心入院してほっとしました。

幸い、20日ほどでしびれも軽快し、症状が残ってはいるものの退院することができました。

 この病気は今は完治する方法がないといいます。唯一、進行を遅らせ再発回数を有意に軽減するのがインターフェロン製剤だといわれています。どうしても仕事が続けたい私は再発するわけにはいかないと思っていました。入院中、脳の病巣が多かったことからベタフェロンの導入を勧める先生もあり、この薬については迷っていました。

 先生方はインターフェロンが自己注射であること、それも一日おきであること、発熱などの副作用があることなど患者さんの負担が大きいので最終的には患者さんが決めることだといいました。今まで健康で自分の体の中に薬という異物を入れたことのない私にとって一日おきにインターフェロンを注射するなんてすぐには受け入れられないことでした。かりに注射を始めたとしてもいつまで続ければいいんだろうとか不安ばかりでした。主治医のI先生にも「医師サイドとしてはベタフェロンの使用を勧める」といわれましたが迷っていました。

 そんな私に決心をさせてくれたのは、東北大学多発性硬化症治療学講座のホームページでした。

 今はインターネットで簡単にいろんな情報が手に入ります。私もMSについてネットで丹念に調べました。その過程で正しい情報を得ること、自分に必要な情報を選択することの難しさも知りました。私が信頼のおける情報源としていくつか選んだうちの一つが東北大学のページでした。

 中島先生は「ベタフェロンに対する不安は当たり前だから悩まないでいいですよ」といってくださいました。その上で「ベタフェロンは再発予防として考えては続けれない。今の脳の状態を保つという目的で続けなければ」とアドバイスくださいました。そうか、考え方が違っていた!そう気づくと迷いは吹っ切れました。

I先生は退院の日「Nさんの運命はね、神様しか分からないからねぇ」と再発の可能性を表現しました。そのころは 「確かにその通りだろうけど、適当だなぁ」と思いました。ベタフェロンを始めた今、やっとI先生と同じように「神様しか分からない」と思えるようになってきました。

 今、2週間に一回病院に行くというのは健康な時には考えられなかった生活です。診察室では一喜一憂、しびれが軽くなったというと「よかったね」と温かく喜んでくれるI先生に励まされながら、治療を続けています。

 自分がこの病気になって、治療をしっかり理解してうけること、薬の作用、副作用を知り、納得して使用すること、そして本人がどういう意識を持って治療を受け入れるかが治療の継続にどれだけ大切なことかを学びました。この経験を入院中、心の底から続けたいと願った薬剤師としての毎日に生かしていきたいと思っています。

 私の経験がまた誰かの役に立てば幸いです。

注:一部誤解を招く表現が初出(2009年9月29日掲載)にありましたので、修正しています。

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