用語解説:東北大学大学院医学系研究科 多発性硬化症治療学寄附講座
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用語解説

多発性硬化症に関係する専門用語の簡単な解説です。参照しやすいように五十音順に並べてあります。

IgGインデックス
IgG index

多発性硬化症(MS)では髄液(中枢神経系を満たす体液)中で免疫グロブリン(IgG)の量が増加します。髄液中の総タンパク量には個人差があるためIgGの相対的な増加量の指標としてIgGインデックスがよく用いられます。髄液中のアルブミン濃度に対する髄液IgG濃度の比を、血清アルブミン濃度に対する血清IgG濃度の比で除した値が一般的に用いられ、多発性硬化症(MS)では上昇しますが、視神経脊髄炎(NMO)では通常上昇しません。施設や測定方法にもよりますが、概ね0.8以上であれば異常と考えられます。MSの診断のための検査は保険適用となります。

IgGインデックス算出方法 IgGインデックス=(髄液IgG/髄液アルブミン)/(血清IgG/血清アルブミン)

アストロサイト(星状膠細胞)
Astrocyte

中枢神経に存在するグリア細胞で、神経細胞による神経ネットワークを支えています。栄養因子などを分泌して神経細胞の維持に働いています。
栄養因子以外にも、多発性硬化症(MS)の炎症に関わるサイトカイン(IL-6やTNFαなど)を分泌する他、炎症細胞を呼び寄せるケモカイン(IP-10など)を分泌して病態に影響を及ぼしていると考えられます。また、アストロサイトは足突起を伸ばして血管を外側から取り囲み、中枢神経内で血管を保護しています。

アストロサイトの足突起には水チャンネルとよばれるタンパク質の一種のアクアポリン4の発現が豊富で血管と中枢神経間における水分子の出し入れを調整していると考えられます。その他、アストロサイトはMSの炎症後の瘢痕形成にも関わっています。

インターフェロン・ベータ
Interferon-beta (IFNβ)

IFNβは抗ウイルス反応を引き起こす体内物質で、サイトカインと呼ばれるタンパク質の一種です。IFNβは様々な種類の細胞から分泌され、主に炎症に関わるリンパ球の働きを調整します。多発性硬化症(MS)の患者さんにIFNβ製剤を投与することで再発予防効果があることが明らかになっており、現在の主流なMSの再発予防薬となっています。現在国内で使用可能な製剤はベタフェロン®(IFNβ-1b)とアボネックス®(IFNβ-1a)の2種類です。ベタフェロンは一日置きの皮下注射、アボネックスは週に1回の筋肉内注射となりますが、いずれも自宅での自己注射が可能です。

オリゴクローナルバンド
Oligoclonal IgG Bands (OB, OCB)

多発性硬化症(MS)の髄液中では、免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質が増加しています。免疫グロブリンは主に抗体として働くため、中枢神経内の自己抗原やウイルスなどの感染因子を認識している可能性がありますが、特定の抗原は見出されていません。MSの髄液中で増加した免疫グロブリンは主にIgGと呼ばれるタイプですが、電気泳動を行うと複数のバンドとして髄液にのみ検出され、これをオリゴクローナルバンドと称しています。オリゴクローナルバンドは病初期を除き、MSの80~90%で陽性となりますが、疾患特異性はあまりありません。慢性感染症や自己免疫性脳炎などでもオリゴクローナルバンドは陽性となることがあります。MSの診断を目的とした検査は保険適用となります。

オリゴデンドロ細胞(オリゴデンドログリア・乏突起膠細胞)
Oligodendrocyte

中枢神経において神経軸索を取りまく髄鞘(ずいしょう)を作り出し、維持するグリア細胞をオリゴデンドロ細胞と呼びます。髄鞘は神経線維の興奮伝達を効率よく行うための絶縁体として働くため、電気抵抗の高い脂質の割合が多くなっています。そのため、中枢神経の中で神経線維(髄鞘)の豊富なところは白っぽく見えるので、白質と呼ばれています。多発性硬化症(MS)の炎症によって髄鞘が剥がれて軸索がむき出しになった状態を脱髄と呼びますが、オリゴデンドロ細胞の働きによってある程度再髄鞘化されます。

核磁気共鳴画像
Magnetic resonance image (MRI)

MRIは強い磁場を利用した画像診断装置で、高解像度の中枢神経の断層写真を撮像することができます。多発性硬化症(MS)の病変の多くはMRIのT2強調画像やFLAIR画像で白く写し出され、T1強調画像で黒っぽく写し出されます。ガドリニウム製剤(造影剤)を静脈内に投与してから撮像することで炎症の強い箇所が白く写し出される(造影効果)ため、新しい病変の検出に役立ちます。定期的(数か月~1年)なMRI撮像による新規病変(無症候性を含む)の出現頻度などがMSの活動性を把握するのに役立つことがあります。病初期のMSの診断にMRIが有用である場合が少なくありません。

視神経脊髄炎(NMO)の脊髄炎では、MRIで脊髄中央付近に長軸方向に長く伸びた病変をみとめることが多く、MSとの鑑別に役立つことがあります。視神経炎の撮像では、眼窩内の脂肪による信号を抑制した脂肪抑制画像が有用です。

血液浄化療法(血漿交換療法・免疫吸着療法)
Plasmapheresis (plasma exchange / immunoabsorption)

視神経脊髄炎(NMO)では血中の抗AQP4抗体が病態に強く関与している可能性があり、血液中の抗体を取り除くことが症状改善や再発抑制に繋がると考えられます。血漿(けっしょう)交換療法もしくは免疫吸着療法は血液中の抗体を一時的に取り除く治療法として有用で、ステロイドが無効なNMO症状や多発性硬化症(MS)の激しい病変などに対して選択されることがあります。これらの治療を行うためには人工透析で用いるような体外循環装置が必要になります。血漿交換療法は血液中の血漿成分を廃棄して、血液製剤であるアルブミン製剤を補充しますが、免疫吸着療法では抗体をカラムに吸着し、残りの血漿は体内に戻すため、血液製剤を使用しません。

抗アクアポリン4抗体
Anti-aquaporin 4 antibody (anti AQP4-Ab)

アクアポリン(AQP)は、細胞の膜上に存在し、主に水分子が通過するチャンネルとして働いています。ヒトには13種類のAQPが存在し、そのうちAQP4は中枢神経に比較的豊富に存在し、脳や脊髄と血液の間の水の出し入れに関わっていると考えられています。視神経脊髄炎(NMO)ではこのAQP4に対する自己抗体が血中に高頻度に存在し、病態に関与していることが強く示唆されますが、詳しいメカニズムはまだ解っていません。抗アクアポリン4抗体の測定法はまだ標準化されていませんが、特異性と感受性が十分で容易に測定できる方法の確立が望まれています。当講座では現在、AQP4を強制発現させた培養細胞を用いた間接蛍光抗体法にて高感度に測定しています。

サイトカイン
Cytokine

細胞間同士の情報伝達に用いられるタンパク質でインターロイキン(IL)やインターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)などの種類があります。サイトカインの役割は多種多様で、炎症惹起作用のほか、炎症抑制作用、免疫抑制作用、細胞分化作用、細胞遊走作用などがあります。
多発性硬化症(MS)の病態にも様々なサイトカインが関与していることが知られており、複雑なサイトカインネットワークを構築しています。特にIL-17やIFNγなどがMSの炎症に強く関わっていることが示唆されています。また、抗ウイルス反応を引き起こすIFNβはMSの治療薬として用いられています。

視神経脊髄炎
Neuromyelitis optica (NMO)

多発性硬化症(MS)に良く似た中枢神経に炎症を起こす病気で、血液中に抗アクアポリン4抗体を高頻度に認めます。デビック病(Devic’s disease)とも呼ばれます。視神経と脊髄が比較的選択的に侵されるため、従来、視神経脊髄型MS(OSMS)とも呼ばれ、現在でも特定疾患公費負担制度の対象になっています。再発頻度はMSよりもやや多く、重度な視神経炎や脊髄炎を呈することがあります。また、ステロイドパルス治療に反応しにくい場合がありますが、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法を追加することで症状の回復が認められることもあります。再発予防にインターフェロン・ベータが無効である可能性が高く、少量の副腎皮質ホルモン(プレドニン)の内服が再発予防に用いられます。免疫抑制剤の内服(保険適用外)を併用することで副腎皮質ホルモンの投与量が減らせることがあります。
診断には血液中の抗アクアポリン4抗体の測定が重要であり、それまでMSと診断されていた症例でも抗アクアポリン4抗体が陽性であることでNMOと確定診断された症例は少なくありません。

ステロイドパルス療法
High dose intravenous methyl-prednisolone therapy

副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド)には強力な抗炎症作用と免疫抑制作用があり、多発性硬化症(MS)の炎症を効果的に抑えます。一方で副作用も多く、長期に使用することは望ましくありませんが、短期間に大量の短期作用型の副腎皮質ホルモン(メチルプレドニゾロン)を静脈内に点滴投与することで比較的副作用なく炎症を抑えることが可能です。これをステロイドパルス療法と呼び、MSや視神経脊髄炎(NMO)の再発時における標準的な治療法となっています。通常1クールはメチルプレドニゾロン0.5g~1gを3~5日間連続して投与し、効果ない場合は1週間毎に1~2クール追加することもあります。
投与時の副作用として、精神症状(不安、抑うつ、イライラなど)、ほてり・動悸、不眠、肩凝り、頭痛、腰痛、月経不順などがあります。副作用の出方は個人差があるので、初めての患者さんは入院して治療を受けるのが望まれます。

多発性硬化症
Multiple sclerosis (MS)

人体における中枢神経は、脳、脊髄(せきずい)、視神経(ししんけい)から成ります。この中枢神経内で単核球(主にリンパ球)や貪食細胞の浸潤を主体とした炎症が生じ、神経線維を取り巻く髄鞘(ミエリン鞘)が剥がれ、神経の伝達障害が起こる病気がMSです。
炎症による再発と寛解を繰り返す再発寛解型と、慢性的な神経変性によって、脳萎縮を伴う認知障害や運動障害、失調症状などが緩徐に進行する慢性進行型などのタイプがあります。病初期に再発寛解型を示し、のちに慢性進行型を示す二次進行性と呼ばれる経過をたどる患者さんも多くみられます。MSの発症原因は不明ですが、複数の環境要因、遺伝(体質)的要因が関与した自己免疫疾患であると考えられています。

ミエリン塩基性タンパク
Myelin basic protein (MBP)

神経線維から髄鞘(ミエリン鞘)が剥がれると、髄鞘の成分タンパクの一つであるMBPが髄液中で増加します。このため、多発性硬化症(MS)の診断目的で髄液MBP濃度を測定することがありますが、疾患特異性はありません。また、MSではMBPに反応するT細胞が高頻度で存在し、MBPに対する自己免疫が働いていることが示唆されています。

免疫グロブリン大量療法
Intravenous immunoglobulin therapy (IVIg)

免疫グロブリン製剤は献血でプールされた血漿成分から精製し、血液製剤として重症感染症や免疫不全症などに使用されています。この免疫グロブリンの短期間大量投与療法の効果がいくつかの自己免疫疾患で報告されており、多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)に対しての効果も期待されています。

リンパ球
Lymph cells

リンパ球は白血球に分類される小型の血液細胞で、主に胸腺(きょうせん)で分化するT細胞と、主に骨髄で分化するB細胞、細胞障害に働くNK細胞、NK細胞の特徴をもつT細胞の一種のNKT細胞などに分類されます。リンパ球同士が接して、あるいはサイトカインなどの物質を介して緻密な免疫ネットワークを構築しています。自己免疫疾患の病態においてもリンパ球は中心的な役割を果たしており、多発性硬化症(MS)においてはほぼすべての種類のリンパ球が病態に関わっていると考えられます。

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