HOME > NMO動物モデル

特別寄稿:大阪大学神経内科 木下允先生/中辻裕司講師

抗アクアポリン4抗体の病原性と補体


 視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica, NMO)は、視神経および脊髄を中心とした炎症を来し、通常の多発性硬化症(MS)よりも症状が重症化しやすい傾向にあることが知られています。またNMO患者さんの病理像では、壊死性変化や空洞形成といったかなり強い炎症性変化が見られますがその機序はまだ良く分かっていません。数年前にNMO患者さんの血清中に、中枢神経系のグリア細胞のひとつであるアストロサイト(星状膠細胞)に対する自己抗体(抗アクアポリン4抗体)が同定され、この自己抗体自身に病原性があるのか否かということが注目されています。

 私たちはNMOの治療として免疫吸着療法を受けられた患者さんの使用済み免疫吸着カラムから精製した免疫グロブリンIgG(この中に抗アクアポリン4抗体が含まれています)を実験動物(ラット)に移入することで、NMO患者さんの病理像に酷似したアストロサイト障害を来すことを見出しました(図)。これはNMO患者さんの血清中に存在する抗アクアポリン4抗体の病原性を証明するものであり、抗アクアポリン4抗体を標的とした治療の重要性が示唆されるものです。この動物モデルをよく観察してみると、アストロサイト障害を来している病変ではNMO患者さんの病理像と同様に、活性化された補体が沈着していることが分かりました。補体とは本来、細菌などの微生物から我々を守る免疫系の血中蛋白ですが、抗アクアポリン4抗体のような自己抗体のなかには、逆に自分の細胞を傷害してしまうような強い反応をおこすことがあります。我々が、アストロサイトの培養細胞を使って行った実験では、抗アクアポリン4抗体の病原性は、補体が同時に存在した場合にのみ強く発現することが分かりました。このような結果は、NMOの病態を考える上で抗アクアポリン4抗体だけではなく補体系が重要な働きをしていることを示しています。
図:アストロサイトが緑色に染められていますが赤線で囲った部分が抜けておりアストロサイトが障害されていることがわかります。

 先日開催された国際NMOシンポジウムでは、抗アクアポリン4抗体を発見された米国メイヨークリニックのレノン教授が補体活性化を阻害する薬剤について触れられていました。過剰に活性化された補体系を抑制することが、NMOの新しい治療法となる可能性があり注目されます。
このページの先頭へ

診療情報

講座情報

一般情報

リンク集・その他

情報を交換し合えるQ&Aを設置

お問い合わせ

Copyright ©2008. Department of Multiple Sclerosis Therapeutics,Tohoku University Graduate School of Medicine. All Rights Reserved.